好きだから 237

back  next  top  Novels


 沢村は慌てふためいて支離滅裂なセリフを羅列する。
「落ち着け。ただの風邪だ。おそらく。疲労と重なったんだろう」
「おそらくって、あんた医者だろ? 検査とかしたんじゃないのかよ?」
「蓼科の山荘だ。こっちに来てから熱があることに気が付いたんで、今眠ってる。お前が追い詰めるから、あのやろう、逃げを打ったんだ」
「え…………」
 沢村は稔の言葉に黙り込んだ。
 そんなに俺が嫌だったのかよ。
「あのな……」
 稔は沢村が何を考えたのか察して、どうしたものかと躊躇した。
「いいか、これからお前がこっちに来るんなら、俺は大事な用があるからここを出る。来ないってなら、もう一切、周平から手を引け」
「誰が引くか! 場所、教えろ!」
 間髪入れずに切り返した沢村に、稔は続けて言った。
「来るつもりなら、お前、姑付きのうちに婿に入るくらいの覚悟で来るんだな」
「はあ?! ……んなくらいの覚悟、とっくにできてんだよっ! あんたに言われなくても!」
 沢村ってこんな血の気の多いやつだったか?
 いつも偉そうに上から目線で見下ろしてロクにしゃべりもしねぇ生意気なやつだと思っていたが。
 稔は苦笑いする。
「ここの住所、言うぞ。長野県茅野市北山白樺湖××××、鍵はポストの下に張り付けとく」
「……わかったっ!」
「待て待てい! この辺りには店とかないからな、食料とか仕入れるには車で街にでるしかない。明日になっても熱が下がらなかったり、具合悪そうだったら街の病院、連れていけ。内村医院って俺の知り合いがやってるから」

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ