粉雪がずっと舞っていた。
東京と比べると気温がかなり低い。
山荘に入るとリビングには薪ストーブが燃えていて温かかった。
佐々木はずっと眠っている。
時折苦し気な呼吸になり咳をするので、沢村は汗を拭いたり、熱用のシートを取り替えてやった。
「医者のくせに、何だよ、市販の薬ばっかじゃねぇか」
枕もとのテーブルに並べてある薬やドリンク剤、ポカリや経口補水液を見て、沢村は呟いた。
赤外線体温計があるので、熱は測りやすいだろう。
ここに着いたのは八時頃だった。
そうひどい雪ではなかったが、気を張って運転してきたので、ここで佐々木の顔を見た時はほっとした。
それから隣のベッドに座って、佐々木を見つめていた。
諦めるつもりはなくてももう会えないかと思ったこともあった。
佐々木が頑なに沢村を拒否しているのはわかったが、稔と一緒だったり、仕事とはいえ八木沼の件で練習場に現れたりと、むしろ沢村を煽ることばかりで、結果佐々木を追いつめるようなことになってしまった。
とにかく今、こうして、佐々木の吐息が感じられるほど傍にいられることが嬉しかった。
沢村はしばらくそうしてただ佐々木を見つめていたが、稔が佐々木の携帯を鳴らしたのは午前零時を過ぎた頃だった。
「一応さっきインフルの検査はしたが、かかった頃合いで陽性にならねぇことがあるし、明日になっても熱が結構高いようなら、内村医院に電話しろ。さっき事情話したら、そっちに来てくれるってよ」
おそらく稔は誠実な人間なのだろう。
もし仮に、万万が一、佐々木が自分をどうしても拒否するというのなら、稔なら託せないこともない、かも知れない。
少なくともあのおちゃらかし大輔とかでは断じてない。
だがそれは万万万が一の話だ。
back next top Novels