好きだから 246

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 フットライトの柔らかい明かりだけにしてあるが、目が慣れると佐々木の顔もしっかり見えてくる。
 何もしてやれないのが、沢村はもどかしい。
 それにしても彰子が佐々木に何を言ったのかが気にかかる。
 父親の方はどうやらマスコミまで利用したアスカの引っ掻き回し作戦のお陰で佐々木の存在にも気づいていないようだ。
 だからこれで万事うまくいったと思っていたのに、確かに箱根の別荘の持ち主は彰子だから、坂下君江が佐々木のことを話しても仕方がない。
 君江はどういうふうに佐々木とのことを彰子に話したのだろう。
 いや、君江から佐々木を何度か連れて行ったことを聞いて、あの慈善パーティでの沢村の失態発言に結び付けて、佐々木と沢村が付き合っていると判断したのか、それこそ調査員でもやとって調べさせたのか。
 ただ、彰子が夫の宗太郎にそのことを告げたとは思えない。
 彰子は宗太郎を嫌っていた。
 憎んでいると言っていいくらい。
 だが、佐々木からしてみれば、宗太郎が息子が付き合っている相手を調べるとかと同様、母親が佐々木本人に何かしらのことを言ったとしたら、引くかもしれない。
 ひょっとして、沢村から離れようとしたのはそれがあるのではないか。
 沢村は腕組みをしてそんなことを頭の中でああだこうだ考えていたのだが。
「とにかく、いざとなったら母さんも切ってやる! もう冗談じゃない」
 思わず口にして、険しい表情のまま佐々木を見つめた。
 身体が勝手に動いて、佐々木の唇にキスしていた。
 途端、熱いものが込み上げてくる。
 ああ、もう、親のことなんかどうでもいい。
 俺は絶対佐々木さんの傍を離れないからな!
 抱きしめたいのをぐっとこらえて、沢村は一度部屋を出た。

 


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