好きだから 25

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「佐々木さん、工藤んとこの仕事ちょくちょくやってるって、言ってなかったっけ?」
 ぼそりと俊一が言うのに、万里子は「聞いてない!」とまたぞろ内戦が勃発しそうな空気を「まあまあ」と藤堂が両手で抑えるような仕草をする。
「小野さんは工藤さんの事務所じゃないですよね?」
 佐々木が尋ねた。
「ええ、独立して個人事務所を持ったんですけど、ひとみさん経由で工藤さん紹介してもらって、私、工藤さんの事務所のタレント第一号なんです」
「そうなんですか?」
「千雪さんの映画初めて作った頃?」
 へえ、と認識を新たにした藤堂らの前から万里子の手を引いて俊一は新しい日本酒を開けているヤギこと下柳の方へ向かう。
 その時またチャイムが鳴った。
「お疲れ~、良太ちゃん、仕事の方は大丈夫?」
 迎えに出た藤堂が良太を連れて戻ってきた。
「ええ、まあ。遅くなりました。何かすんごいロケーションですね」
 眼前に広がる夜景を見てポツリと呟いた良太を見つけたひとみが駆け寄って抱きしめる。
「遅いじゃないの、良太ちゃん!」
「……ひとみさん、結構飲んでますね?」
「やだ、こんなの序の口よ。良太ちゃんも飲もう!」
 ひとみは明らかに酔っている。
 いったいどれだけ飲んだんだ、と訝しむ良太に、下柳がテーブルにあったワインボトルを大げさに逆さにして見せた。
「すみません、ひとみさん、ちょっとあっちで休みましょう」
「なによ、須永! あんた生意気!」

 

 


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