好きだから 253

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 佐々木のことがあるので、番号を聞かれてとりあえず教えたのだ。
「内村、来てったか? インフルは? 熱は?」
「陰性。風邪だろうって。三十八度ちょい」
「そうか、ま、そりゃ、しばらく寝かせとけ。あいつ、日曜にお茶の稽古とか言ってたが、まず無理だな」
「それはダメだろ」
「お前、あいつの熱が下がるまでついてるか? それとも……」
「ついてるに決まってるだろ! 熱が下がったら俺が連れて帰る」
「フン、んじゃま、しっかりやれ」
 電話が切れると、またぞろ稔に対してムカついてくる。
「えっらそうに!」
 ふとサイドボードの上の飾り時計を見ると、十時を回ろうとしていた。
「あ、直ちゃん、俺、沢村だけど」
 佐々木オフィスに電話をすると、直子はびっくりしたような声で「え、どうしたの? 何かあったの?」と勢い込んで聞いてきた。
 沢村は今蓼科にいて佐々木が熱を出して寝ていることや日曜の稽古は無理かもしれないことを伝えた。
「わかった。先生にうまく伝えとくね。ああ、でも、仲直りできたんだ? よかった~! 佐々木ちゃん、ほんとにあり得ないくらい仕事してたから、多分、沢村っちと喧嘩してたせいもあるんだよ、きっと。もう、絶対、佐々木ちゃんのこと、離しちゃだめだからね!」
 だーっとまくしたてて、最後は涙声になっている直子の佐々木を心配する気持ちが流れ込んできて、「わかった」と沢村は真面目に答えた。
 佐々木が眠っているのを確かめると、雪道用のランニングシューズに履き替え、沢村は外に出た。
 雪道を一時間ほど軽くジョギングして山荘に戻ると昼近くなっていた。
 何か買い出しに行くかと考えつつ、シャワーを浴びて出てきて間もなく、沢村の携帯が鳴った。
「よう、また飲んだくれてんじゃないんだろうな」

 


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