好きだから 255

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「フーン、金絡みってどこの世界にもあるもんだな」
「ま、とにかく、佐々木ちゃんの懸念の案件が一つ片付いたからって言っておいてね」
「了解」
 金絡み、はどこの世界でもあるのだとは、沢村自身が身をもって知っているが、聞かされると嫌な気分にしかならない。
 クソオヤジ関連で調査を依頼した弁護士、小田から、兄宗一郎が衆議院議員三輪田に菓子折りらしきものを渡している写真を見せられた。
 沢村宗太郎が叩けばいくらでもほこりが出るだろうことは予想がついたが、兄も結局その片棒を担がされている事実を突きつけられるのは不愉快だった。
 野球界でもいくらでもある。
 つい最近では、チームの若手がタニマチに車や女の子をあてがわれ、有頂天になって接触事故を起こすという不祥事があったし、過去にはタニマチのお陰で球界から消えた選手もいると聞いた。
 沢村はタニマチとは直接接触したことはない。
 それは、沢村が富裕層に属しているというだけではなく、沢村の祖父であり、元三友産業CEO大河内正孝は生粋のタイガースファンでありスポンサーだったように、その息子である伯父正義が跡を継ぐように現在タイガースの大きなスポンサーでもあることから、ある意味別格扱いなのである。
 祖父も伯父も悪質なタニマチとは一線を画しているが、球団の内部にもタニマチの意向が入ることもあったようだ。
 沢村は関東六大学野球で活躍し、啓應大からドラフト一位でパリーグのレッドスターズに入団、新人王に始まって首位打者二回、その後星川監督に請われて関西タイガースに移籍して二度の三冠王に続いて今年は二冠だが、チームのリーグ優勝に尽力した。
 だが鳴り物入りで入団したレッドスターズでフル活躍の沢村が、尊敬する星川監督に請われたとはいえ三年でタイガースに移籍したその裏には、タニマチの意向が大きく左右したとも言われている。
 スポンサーである三友産業の威光をかさにきた輩が何かしらの意図をもって球団に働きかけをしたであろうことは想像に難くない。
 ただし、沢村は伯父に対しても沢村たる意志は伝えている。
「野球は好きだが、身体が資本のこの稼業、いつ辞めるかわからない。自分で事業も始めている」

 


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