好きだから 258

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 佐々木と沢村が東京に戻ったのは日曜の昼過ぎだった。
 土曜日はインスタントコーヒーしか入れたことのないような沢村が買ってきた乾麺のうどんを茹でると言い出し、茹で方を読みながらうどんと格闘しているのを見かねて、佐々木が手を貸そうとするが、沢村は頑として俺がやると言って聞かず、何とか茹でたものの麺が茹ですぎだったり、シーツを取り替えたり、洗濯して乾燥させた洗濯物を難しい顔で畳んでいる沢村の様子に佐々木は腕組みをして温かく見守るしかなかった。
 夜には沢村がテイクアウトしてきた寿司を二人で食べながら、ダイハードシリーズを全て鑑賞しつくして、寄り添うように眠った。
「佐々木さん、着いた」
 薬を飲んだせいもあって、ぐっすり眠っていた佐々木は目を覚まし、着いたところを見回してからややあって口を開いた。
 隔離された二人だけの世界で過ごしたまったりとした時間はもう終わり、現実の世界に舞い戻ったかのような空気感がそこにはあった。
「俺んちやないで」
「まだ一人じゃ心配だから」
 仕方なく降りたものの、手を引かれて定宿である沢村の部屋へ連れていかれた佐々木は、ドアが閉まった途端、ドアに押し付けられるようにして唇を貪られた。
「……苦しわ! 俺は病人やで……」
「もう治ったんだろ? 佐々木さんの特効薬は俺だし」
「勝手なこと言うな」
「効いただろ?」
 沢村はどこかで聞いた薬のCMのようなセリフを吐く。
「佐々木さんの身体は俺が不足するとだめになるって言ってる」
「アホか………まだ体力も戻ってへん……」
「極力考慮する」
 言うなり沢村は佐々木を担ぎ上げ、ベッドに運ぶと一緒に倒れ込む。

 


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