佐々木が回復するまではと敢えて自分に我慢を強いていた沢村は、一気に戒めを解いた。
このガタイで組み伏せられるとある種の怖れのような戦慄に支配され、わずかばかりの抗いもそのうち沢村のいいように操られて、佐々木の中に燻っていた沢村を拒否らねばという決意の残骸もどこぞへ吹き飛んでしまった。
沢村から逃げようとしたのも、捉われたら自ずから離れることは到底できないことはわかっていたからだ。
「俺から逃げるなんてできないんだからな」
これまでの様々な憤りや自分への情けなさが、沢村に脅し文句のような台詞を口にさせ、凶暴にさせてしまう寸でのところで佐々木への愛おしさがブレーキをかける。
佐々木の中に深く入り込み、やっと佐々木を取り戻せたと思う。
「………トモって呼んでよ…」
沢村の唇が耳朶に囁く。
またぞろ急激に熱が上がったかのように佐々木の全てが真っ白になり、譫言のように「トモ…」と口走る。
どのみちこの腕を離したくはないのだ。
身体が蕩けて沢村に飲み込まれていく。
悲鳴のような声の後、佐々木の吐息が切れた途端、奥で締め付けられた沢村も佐々木さんと口にして熱く唸り声を上げた。
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