好きだから 263

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「それは……!」
「とにかく、佐々木さんが俺以外の誰かに触られるとか、金輪際嫌だ!」
 ふうっと、佐々木は溜息をつく。
 先だって電映社の今西らとCMの件で練習場を訪れた時、八木沼が佐々木の手を握りしめた時に沢村がキレなくてよかったということか。
「そうだ、そういえばあんた、俺の母親に会ったって?」
「は?」
「俺の母親! あの人が何話したか知らねぇが、無視しろよ、無視!」
「母親って、お前のオカンに? いや、会うてないで? 俺」
 沢村は佐々木を振り向いた。
「やから、前向け前!」
「会ってない? うーん、んじゃ、あの人、どこの佐々木さんに会ったんだ?」
 何を間違えたんだ?
「会ってないんなら、いいんだ、忘れてくれ」
 沢村は解せぬまま、それ以上追及もしなかった。
「そうだ、明後日の大掃除、朝から行くから」
「はあ?」
 今度は佐々木が沢村を見た。
「直ちゃんに聞いて、あんたのお母さんに伝えといてもらったから」
 再度佐々木は深く溜息をついた。
 どうやら佐々木の断りもなく、ことは進んでいるようだ。

 


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