好きだから 264

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 オフィスに着くと、涙目で直子が出迎えた。
 大和屋の方は浩輔に任せてあるし、やり残した仕事をいくつかやり、午後からジャストエージェンシーの納会に直子と二人で顔を出した。
 みんなからいろいろといじられながらも、佐々木は何とか今年も穏やかに年を締めくくられそうだと、心底ほっとしていた。
 翌日はオフィスの大掃除になっていたが、佐々木がオフィスについた頃にはもう既に直子があらかた掃除を終えていた。
「佐々木ちゃん病み上がりなんだから、座って自分の周りだけ片付けて」
「はーい」
 直子に指示されて笑いながら返事をした佐々木は、何が何だかわからないまま、結局元の木阿弥になってしまったことを苦笑した。
「あーあ、何、やってんね、俺」
 昼は予約しておいたフレンチレストランで直子とランチを取った。
「悪い、年明けたら、またちゃんと、直ちゃんの行きたい店、連れて行くよって」
「楽しみにしてる! でも来年は仕事ももっときっちりスケジュールたててやろうね。佐々木ちゃんが寝込んだら意味ないし」
 マグロのポワレを口に運んだ直子は、「美味しい、これ」と頷いた。
「そうやね。来年もよろしゅう、お願いします」
「こちらこそ、お願いします」
 二人はようやく心から微笑みあった。
 佐々木家の大掃除には朝から沢村がトレーニングウエアを羽織って元気一杯現れ、家政婦の仲田や業者は昨年と同じメンツだったので、和やかにてきぱきと仕事が進んだ。
 淑子に指図されずとも、佐々木の身体を労わりつつ、昨年やった大きな家具の移動も沢村が難なく済ませ、大きな身体を手際よく動かして大掃除は例年より早く、午後四時には終了した。
 業者が帰り、仲田が夕食の買い物に出かける頃には、淑子が玄関や茶室、和室の床の間に花を生け、佐々木が正月用の飾りつけを終えていた。
 はあ、これで今年の行事は終わった、もう部屋でぐーたらしたいわ。
 佐々木が心の中でそんなことを思った矢先。

 


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