好きだから 28

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「そうか? 何か怪しいで」
 言いながら千雪はふわあとひとつあくびをした。
「お疲れのようですね」
「まあな、学会の教授の論文のてったいで、徹夜や」
「いよっ! 久しぶり! 名探偵が名探偵してるし!」
 そこへ明るい声が割り込んできて千雪の肩をポンと叩く。
「万里子さん、久しぶりやな」
「そのまま映画に出ちゃったら?」
「それいいかも! 美しすぎる金田一って、もうキャッチ決まり?」
 万里子の提案に直子が同調する。
「映画はないけど、東京出てきたとき、最初はほんま、ジャージとかやのうて、これでいこう思うてたんや」
「は?」
 良太は思わず聞き返す。
「ただ、剣道着はやっぱ普段の生活にはめんどいし、ジャージの方が動きやすいしな」
「あ、そういえば、千雪さん、剣道、段持ちでしたよね」
「まあな、せえけど、最近忙しうて、身体もなまるし、運動がてら明日からこれで歩いてみるんもおもろいかな」
 嬉々として語る千雪の背後からぬううっと大きな影が立ち上がった。
「や~め~ろ!」
 何やら地の底から唸るような声に一同が固まった。
「やだ、京助さん、いたんだ? ホビットが出くわした不気味なストライダーみたい」
 万里子が言うと、直子が「きゃはは、まんまだ~」と笑う。
「どしたの、げっそり無精ひげ!」
「司法解剖で二晩徹夜したんや。来んでええ、言うたのに」
 京助に代わって千雪が万里子に答えた。
「何だ、そのホビット、ストライダーってのは」
 むすっとしたまま京助はグラスのワインを飲み干した。
「え、知らないの? ホビットとストライダー!」

 


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