好きだから 29

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「こいつにロマンを求めるのは間違うてるわ」
 ぼそりと呟く千雪の横で万里子と直子はそのホビットやストライダーの話で盛り上がり始めた。
 その時、良太の上着のポケットで携帯が着信を知らせた。
 画面には、遠野の文字があった。
 遠野は小田事務所のパラリーガルだが、仕事は調査業務の比率が高い。
 良太はドア口まで行って、電話に出た。
「あ、遠野さん? お疲れ様です。はい」
 良太は遠野の話を聞きながら徐々に表情がこわばっていくのが自分でもわかった。
 電話を終え、リビングルームに戻ってきて何気なく沢村を探した良太は、煌めく夜景を背景に二つの寄り添う影を見つけた。
 ふっと一つ息をつくと、今度は飲み物の世話をしている秋山と藤堂のところへ行った。
「今、遠野さんから連絡があって、やっぱいたそうです、沢村を張っているらしき人物が」
「良太ちゃん、顔が怖いよ」
 藤堂が茶化す。
「自分の子供を興信所とかに探らせるような親って、マジ腹立つ!」
「良太は幸せな家庭に育ったんだな」
 グラスにワインを注いでスタイリッシュなモデルたちに渡しながら秋山が苦笑いする。
「え、まあ、うちは貧乏だけど、借金背負っても子供に高等教育受けさせてくれて、工場取られても、ほんわか生きていける親ですからね…ってか、俺のことなんかどうでも、とにかく、遠野さん情報だと、沢村の父親のお抱え弁護士事務所が雇ってる興信所の調査員で、元警官の五十がらみのオッサンらしくて、画像送ってもらいました」
 空になったグラスをまとめて良太は腕時計を見た。
「なるほど、そうすると、プランB決行だな」
 藤堂が一人頷いた。

 


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