好きだから 31

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「まあ、ろくでもない男いうことでは俺のオヤジも右に同じかもな」
 佐々木本人からは少しだが、父親の話を聞いたことがある。
 商才も甲斐性もない女にだらしない早死にした父親だと。
 だから煩いオカンだとか言いながらも母親を大事にしている。
「そうだ、大掃除、いつやるんだ? また三十日頃にやるのか?」
「やからまだわかれへんて。まあ、そのあたりになるとは思うけど、まだ先の話やから」
「俺、十二月から自主トレやるから、ちゃんと佐々木さんちの大掃除のスケジュール押さえておかないと」
「お前がうちの大掃除のスケジュール押さえてどないすんね。自主トレやったらそれに専念したったらええ」
「それはちゃんとやるさ。ほら、俺、去年の大掃除ン時も、佐々木さんのお母さんに結構頼りにされてるし」
 やる気満々な沢村に、佐々木は少し戸惑いを見せる。
 この一年の間に折に触れて沢村は佐々木の母淑子と顔を合わせていた。
しかも土地を購入したりと、淑子が沢村のことをどう思っているのか、佐々木は触らぬ神に祟りなしとそんなことを聞くつもりはないが、この上何かを建てるつもりでいるらしい沢村にどう対応していいのか、佐々木自身わからないでいる。
「佐々木さん、とにかくスケジュール、教えてくれよ。何か例のクスリで捕まった俳優の関係で、忙しいって?」
「まあな。このクソ忙しい時に、メンドイことしてくれよって」
「そっか、どっかで時間取れたら、またスキー行くだろ? 俺、合わせるからさ」
「そうやな……」
 返事は低めのテンションのようだが、実際佐々木はこうして周りに人がいるにもかかわらず沢村といたかった。
 会いたかった。
 それは如何ともしがたい事実で。

 


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