好きだから 35

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 Act 4

 昼にはまだ早かったが、十一時は過ぎていた。
「何だ、一体これは!」
 オフィスのドアが開くなり、入ってきた工藤高広は声を荒げ、持っていたスポーツ紙をテーブルに叩きつけた。
 堂々と一面を飾っているのは人気女優中川アスカと関西タイガースの四番打者沢村智弘とが腕を組んでホテルへ入っていく写真だった。
「朝っぱらから怒鳴り散らすと、血圧が上がるわよ、若くないんだから」
 鬼の工藤と称された男の怒鳴声にも一向に怯むでもなく、早朝工藤から呼び出され、秋山とともにオフィスに現れたアスカは窓際のソファで優雅に紅茶をすすった。
「どうしてわざわざマスコミにネタを売るようなマネをした?」
「たまにはいいじゃない? 犯罪でもあるまいし、ちょっとは世間が中川アスカを思い出してくれるわ」
「あえてネタを提供したんです」
 露悪的なアスカの言葉を遮るように、常に冷静な面構えに難しい表情を浮かべた秋山が言った。
「売名的な手段をお前が使うとは思えないが」
「二人のせいじゃないです」
 キーボードの手を止めて、良太が立ち上がった。
「留守中何事もなかったと、昨夜お前は言った気がするが」
 工藤は振り返って良太を睨みつけた。
「私から話します。私たち事情を知っているみんなが協力したでっち上げなんです。沢村くんと、佐々木さんのために」
 良太が何か言う前に、秋山が切り出した。
「……佐々木さんの? どういうことだ?」
 一呼吸おいて工藤は聞き返した。


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