好きだから 37

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「すごぉい、見てきたようなドラマ仕立て! あたしと沢村っちの馴れ初めから、きゃあ、もう双方の両親に紹介済みとか書いてある!」
「そんなことで、はしゃがない」
 秋山がアスカを窘める。
「だってぇ、この分だと挙式の日とかも決めてくれちゃいそう!」
「今後は、バカをやる前に俺に報告しろ。フジタに行ってくる」
 工藤はフンと眉間に皺を寄せると、アスカを一瞥しただけでコートを掴んで足早にオフィスを出て行った。
「なーによ、佐々木さんが絡んでるってわかったら、トーンダウンしたくせに」
 軽い悪態をつくアスカを、良太はチラリと見やった。
 アスカが何を言いたいのか、良太もわかっていた。
 誰にも公平に厳しいはずの工藤が、何故か最初からあたりが柔らかかったのは、昔隣に住んでいた幼馴染みの佳乃とそして佐々木だ。
「ああ、そういえばどんな無茶振りされても渋々従う相手がもう一人いたっけ」
「何か言った?」
 秋山にせかされて立ち上がりながらアスカが良太の独り言を聞きつけて振り返った。
「別に。行ってらっしゃい!」
 アスカたちが出ていくとオフィスはすっかり静かになった。
 四時には、良太も例の水波清太郎が関わって撮り直しとなったCMの打ち合わせに出かけなくてはならない。
 打ち合わせには佐々木もスタジオで合流することになっている。
 今朝は佐々木がホテルを出てから藤堂が沢村のスーツとコートを着て昨夜パーティ会場となった部屋に戻り、沢村にスーツをチェンジし、沢村がホテルを出てしばらくしてから藤堂が自分のスーツに着替えてホテルを出るという念の入れようで、工藤が来る前に藤堂から良太に「Mission Complete!」と連絡があった。
「いやあ、髪型にサングラスで何とかごまかせたかもだが、何といっても現役アスリートだからね、ベスト二枚重ねしても肩がだぶついちゃったよ」
 藤堂はお茶目に笑ったが、「しかし、いつもこれやるわけにもいかないしね~、あちらさんが、佐々木さんのためには、アスカさんとのスクープで諦めてくれればいいんだけどね~」と付け加えた。
 それを思い出すと、良太は自分の子供のあら捜しを興信所に依頼するなどという沢村の父親に対してまたぞろ怒りが込み上げてくるのだった。


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