好きだから 40

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 いや、何も結婚しているわけでもなし、この関係が未来永劫続くわけでもない、いつ終わってもおかしくはないこともどこかではちゃんとわかっているはずではないか。
 もっと冷静に、ならな………。
「しばらく会わん方がええな」
 遅くに電話をしてきた沢村に、佐々木は言った。
「しばらくっていつまでだよ!」
 案の定、沢村は怒ったように聞き返した。
「マスコミに追いかけられてるやろ、お前もアスカさんも」
 そういわれると沢村はぐっと言葉に詰まる。
 佐々木にとっては沢村のためというのも無論だが、あまりに沢村に振り回されている自分には冷却期間を置いた方がいいだろうと思ったからだ。
「次のターゲットが現れれば、少しはおさまるんやないか」
 もっと面白いネタがあれば、マスコミはすぐにそっちになびくだろうと、多少の慰めを含んで、佐々木は言った。
「わかった。電話はするからな」
 明らかに不本意さを滲ませながらも沢村が引き下がらざるを得なかったのは、沢村に張り付いているのがマスコミだけではないからだった。

 

 翌日、良太がプロデューサーとして名を連ねているスポーツ情報番組『パワスポ』の収録が行われたのは世田谷にある美術館のラウンジを借り切ってであった。
 ガラス張りのラウンジは天井が高く開放感があり、春、夏、初秋にかけてはオープンテラスにもなり、広大な敷地は公園にもなっていて色とりどりの樹々が美しい秋を奏でている。
 美術館と野球選手という一見ちぐはぐにも思われる取り合わせであるが、今回対談を行う二人のスラッガーに、どこか好きな場所があればと良太が聞いたところ、沢村が即座にこのラウンジを指定した。
 対談相手のレッドスターズの新鋭、八木沼大輔はどこでも構わないと答えたので、このラウンジでの収録となったのだが、沢村は深いブラウン系のシックなスーツ、八木沼はアッシュグリーンのニットに黒のテーラードジャケットとスキニーパンツというくだけ過ぎず、硬すぎずで現れた。


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