好きだから 52

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 石川と名乗ったその看護師は、手塚が訳を話すと、住み込みの淑子のサポートを快く引き受けてくれた。
 手塚が入院用のパジャマも貸してくれるというので、石川は車椅子を持ってくると淑子を乗せてエレベーターで二階にある病室へと向かう。
 佐々木と直子は後ろからついて行ったのだが、あくまでも気丈な淑子は「早う帰って後片付けしなさい」と佐々木に申し渡した。
「直子さんには遅うまでお世話かけましたね、周平、直子さんをちゃんとお送りしなさい」
「あ、はい、もちろん……」
「それじゃ、先生、お大事になさってください」
 淑子を石川に託して二人は病室を辞すると、手塚が階下で待っていた。
「相変わらずきっついな、お前んちのオフクロ」
 手塚は笑いながら、「風の噂にお前、離婚したって聞いたけど、とっくにこんな可愛い彼女いたんだ?」と付け加えた。
「あ、いや…」
「私は佐々木さんのオフィスのアシスタントで、今夜はお茶のお稽古にお邪魔していただけです」
 佐々木が何か言う前に、直子がきっぱりと言い放った。
「ほんまに直ちゃん、おおきに! 車で送るわ」
「まだ電車動いてるから平気。佐々木ちゃんはとにかく、身体休めて! 明日早いんでしょ? 片付けも明日やっとくし、先生のことは私も中田さんもいるし、任せて! いい? ちゃんと睡眠取らなきゃダメだからね!」
「わかった、おおきに」
 ビシッと言われると、佐々木も頷くしかなかった。
「じゃ、これで失礼します!」
 元気な足取りで帰っていく直子を見送った佐々木は、深く息をついた。
 何が何だかという状況である。


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