好きだから 59

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 ACT 7

 太陽の日差しはあるが、真冬並みの北風が街を吹き抜けていた。
 午後になると少しは風も和らいで、かつ佐々木の仕事もどうやら目途がつきそうになってきた。
「直ちゃん、ここ数日のお礼もかねて、近いうちに夜ごはん、食べ行こか。コースでもかまへんで。直ちゃんの行きたいとこ考えといて」
直子がいれてくれたコーヒーをしみじみと味わいながら、佐々木は言った。
「え、それは嬉しいけど」
 何か含みのある言い方に、佐々木は直子を見た。
「あ、今日はライブやろ? 何やったらキリのええとこで上がってええよ」
 シックながら黒のかっちりしたジャケットの中は黒のレースをふんだんに使った少しフレアのあるワンピースだ。
 足元は厚いソールのレースアップブーツで、きゃしゃにとがったつま先のラインがきれいである。
 大好きなメタルバンドで随分前に来日が決まり、かなりいいチケットを手に入れた時は友達と飛び上がって喜んだものだが、今この日の直子は、正直、あの喜びようはどこに、な感じなのだ。
 佐々木と沢村のことを考えると、悲しくなってしまうのだ。
 佐々木が幸せなら、メイクもばっちり決めてライブにGOというところだが、あにはからんや、忙しさだけではない、どう見ても佐々木はどこかしら頼りなく、寂しげなのだ。
 ちょうど去年のクリスマスの頃がこんな感じだった。
 ううん、違う、何か、今回は神経が麻痺しているっていうか、空虚っていうか。
 直子がそんなことを考えていたところへ、電話が鳴った。
「オフィスササキでございます」


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