好きだから 6

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 こういう展開になろうとは、沢村もまさか考えてはいなかった。
 数日前、スポーツ紙には、関西タイガース沢村選手が大手企業社長令嬢といよいよ結婚か、という文字が踊り、慈善パーティの晩の二人を捉えた写真が大きくスクープされ、写真週刊誌やネットニュースでも一気に拡散した。
 ここのところそういったゴシップ記事からはとんと縁がなかった上、今年は三冠王こそならなかったものの、打点、打率では二冠、ホームラン王の代わりにチームをリーグ優勝まで引っ張った立役者として、解説者や評論家、ファンに対してもしっかりと実力を見せつけた年になった。
 残念ながら日本シリーズでは敗者に終わったが、次なる目標として来年もチームを牽引することを期待されているのは間違いない。
 沢村にしてみれば、チームに貢献できたことと佐々木との距離が少しでも縮まった一年だったのだ。
 それがここにきて、つまらないことでまた佐々木に距離をあけられてはかなわないと、すぐにも状況を説明したかったところなのだが、佐々木にとっても多忙な一年であり、残念ながらちょうどその頃、佐々木は代理店の藤堂とニューヨーク出張中だった。
 さらにその後、こうして佐々木にも内緒で弁護士に相談しなくてはならないことになってしまったことも心苦しい。
「お前さ、もし相手がお前の言ったことをそのまま受け取ってマスコミがそれを流したらどうすんだ?」
 良太に言われなくても、沢村も全く考えなかったわけではない。
 高校時代から追い掛け回されたことからマスコミ嫌いで知られ、取材も受けたがらない、スポーツ関係の番組への出演も滅多に受けないことは業界でも有名な話だ。
 中には思い上がっているとか何様のつもりだ、などとこき下ろす者もいるが、何せ実力がものをいう世界である、何とか沢村への取材を取り付けようとマスコミも必死である。
 そんな沢村が唯一たまに出演しているのが良太がプロデューサーとして名を連ねている『パワスポ』だ。
 沢村に対して歯に衣着せぬ物言いでで怒鳴りつけることができるのも、星川監督の他にはこの良太くらいだろう。


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