好きだから 79

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 その電話がかかってきたのは、翌日の夕方、良太がちょうど打ち合わせから戻ってきたところで、鈴木さんがパソコンの電源を落として帰る準備をしようと立ち上がった時だった。
「青山プロダクションでございます。はい、真岡様? 工藤はただいま席を外しておりますが、どのようなご用件でしょうか?」
 コートを置いて、デスクについたばかりの良太は、少し怪訝そうな表情で鈴木さんを見た。
「はい、至急とおっしゃられても……はい」
「誰? 代わろうか?」
 良太は鈴木さんに近づいて言った。
「あ、少々お待ちくださいませ」
 鈴木さんは電話を保留にした。
「真岡様という方なんだけど、至急社長と話したいっておっしゃるの。何だかあまりいい感じがしないわ」
 真岡という名前をどこかで聞いた気がして、良太は受話器を取った。
「お電話代わりました。私、社長秘書をしております広瀬と申しますが、生憎工藤は出張に出ておりまして、今週末までは戻らないものですから、至急のご用件でございますか? よろしければ私が承りますが」
 良太は電話口でそう話しながら、脳みそを総動員して真岡が何者なのかに辿り着き、電話機の録音ボタンを押した。


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