好きだから 8

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 アスカの勘の良さは良太もわかっているので、「別に何も企んでませんよ」と良太はとっとと自分の席に戻る。
「万が一沢村宗太郎氏の行為があなたや佐々木氏のプライバシー侵害となり不利益になるような不法行為だと判断すれば告訴も辞さないと。この場合、主に損害賠償請求となりますが、仮に名誉を傷つける不法行為や犯罪行為に値するようであれば名誉棄損罪ともなりますが、お父上相手でも?」
「無論です」
 詳細を話し合い、やがて小田が帰っていくと、沢村は大きく息をついた。
「おい、良太、お前、T大法学部なんか出てるくせに、何で弁護士じゃねーんだよ!」
 八つ当たりでしかない難癖に面倒な書類を作っていた良太はついキーボードの手を止めた。
「うっせーよ! 俺は学生時代野球しかやってなかったんだよ!」
 大体弁護士とかそう簡単になれるもんじゃないだろう。
 まず試験受からないとだし、と考えて良太は卒業前に司法試験に受かっていたという小田の同期が身近に約一名いたことを思い出した。
 くっそ、それこそ何で工藤は弁護士にもならずに芸能プロとかの社長なんかやってワーカホリックに大阪なんか行ってるんだよ、とでも八つ当たりしたいところだった。
「まあまあ、とにかく、沢村さんもこちらでお茶いかが? 藤堂さんのお土産のブラウニー、とっても美味しいんですのよ」
 空気がどんなに剣呑でも鈴木さんのおっとりした言葉には和まずにはいられない。
 しかしアスカの向かいに腰を下ろした沢村は、藤堂の土産というブラウニーを睨みつけた。
 藤堂と一緒に仕事先のニューヨークから戻ってきたはずの佐々木とは電話ごしに言葉を交わしたくらいでまだ顔も合わせてはいない。


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