好きだから 84

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「ひとつ、申し上げなければならないことがあります。これは沢村さん、あなたの不利益にも成り得ることなので、我々はあなたのお考えに従いますが」
 小田は声を落とした。
 オフィス内はしんと静まり返り、キーボードの音だけが響く。
「今回、ちょっと藪をつついてしまったようです」
「というと?」
 もったいぶったというより、しばし躊躇したようだが、小田は持っていたタブレットを沢村に向けた。
 画面にはいくつかの画像が並んでいて、小田はその一つを拡大した。
「これは……」
 そこにはどこぞの高級料亭らしき廊下を男が三人ほど歩いているようすが写っていた。
「別件もあって、この料亭にうちの息のかかった調査員がもう何か月も前から潜り込んでいましてね、たまたまこういう画像が紛れ込んでいたんです」
 さらに別の画像は沢村の兄宗一郎が持っていた紙袋を衆議院議員三輪田の秘書らしき男の手にこっそり渡しているとみられる図だ。
「ターゲットは三輪田議員や朝日産業ではありませんでしたし、この画像だけでははっきりどうということも言えず証拠能力もありませんが、もし人目に触れたら、いろんな憶測をかきたてられるものですからね」
「立派に贈収賄でしょう。おそらくクソオヤジの頃からじゃないんですか」
「まあ、素行を改めなければいずれ、そちらにも検察の手が入ることもあることをお知らせした方がいいかと思いますが」
 小田はそれらの画像が入っているのであろうUSBを沢村に差し出した。
「親子は完全に縁が切れるものではないらしいが、状況的には財産放棄していて、もう一切沢村とは関わるつもりはないので、これ以上俺に対する迷惑行為をやめないってんなら、こいつを見せて警察に通報してやるって言ってください。っていうか、あいつらが犯罪を犯しているというなら、逮捕されたって当然、通報するべきじゃないんですか? 俺の方は一向に構いません」


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