好きだから 87

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  壁の時計の針が午後三時に差し掛かろうという頃、オフィスササキには香しいコーヒーの香りが漂っていた。
 スイーツが苦手だという男が多い中、佐々木の周りには佐々木を含めて比較的女子たちに混じってお茶の時間を楽しむ男の比率は高い方だ。
 茶道をやっていると甘い菓子に免疫ができるからか、佐々木は和菓子も洋菓子も美味しいものは好きだ。
 青山プロダクションの工藤は甘ったるい洋菓子など苦手だと聞くが、良太にせよ、プラグインの藤堂や浩輔にせよ、美味しいスイーツには目がない。
 そういえば沢村もケーキでも和菓子でも豪快に食べるな、などと思い出して、佐々木は一つ溜息をついた。
「今日、三度目だよ? おっきい溜息。もうさ、疲れがピークなんじゃない?」
リビングのテーブルにコーヒーと今日は近くのパティセリーでゲットしたシュークリームを並べながら、 直子が佐々木を心配そうに見た。
「ああ、いくらなんでもや。仕事も一進一退やしな」
 先日、打ち合わせの時に拾ったアスカの携帯をその帰りに青山プロダクションに寄って預けてきた時のことだ。
「大丈夫ですか? お疲れみたいですね」
 良太にも心配されたが、よほどしょぼい顔をしていたのだろう。
 顔に出ているのは疲れは疲れでもむしろ心的なものだ。
 考えないようにしてもいつのまにか沢村のことが頭をもたげてくる。
 仕事も今日明日でキリをつけなければならないのに、何だかすべてが億劫になってしまっていて、脳が時々エンストを起こすのだ。
 ぼんやりそんなことを考えていると電話が鳴った。


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