好きだから 9

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 例のスポーツ紙のゴシップがテレビや写真週刊誌を沸かせたのは二人がまだニューヨークにいた時だが、ネットにも流れているのでとっくに知っていたと思うし、それについて沢村はまだ何の弁明もしていないのだ。
 内心焦りはあるものの、当の佐々木は忙しいし、沢村も球団関係のイベントや後援会のパーティなどであちこち飛び回っていた上に、こうして弁護士に相談しなくてはならないような事態になってしまった。
 とりあえず佐々木とは、明日何とか会う約束を取り付けたのだが。
 どうやって、佐々木さんと会うか、だよな。
「オフィス、狭いから聞こえちゃったんだけどさ、沢村っち、何か、物騒なこと言ってなかった? 訴訟とか犯罪とか? あ、これ美味しい!」
 アスカは遠慮なく大きな口を開けてブラウニーを食べる。
 狭くはないが、奥のソファセットからそう遠くはないから、よほど小声でしゃべらなければ聞こえてしまうだろう。
「アスカさん」
「いんだよ、小田先生にもここのオフィスは俺らのこと知ってるからって言ってあるし」
 窘める秋山を遮るように言うと、沢村はブラウニーを手に取ってがぶりと半分ばかりを食べてしまう。
 小田の事務所を訪ねるのも憚られて、考えた挙句、このオフィスしか思いつかなかったのだ。
「で? あのご令嬢と結婚するの?」
「するわけない!! ったく、冗談じゃない!」
 揶揄するアスカに沢村は思わず声を上げる。
「ってか、何があったのよ?」
 さりげなくも有無を言わさないアスカの突っ込みに、こうなったらとばかりに沢村は口を開いた。
 
 日本シリーズも終わった一週間ほど前のことだ。


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