好きだから 95

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  ACT 10

 やっと仕事が一段落したので、佐々木はお茶の稽古に顔を出すことにした。
 昨日買ってきた「やさか」の菓子を持っていくことは、前もって淑子に伝えてあった。
  その前に、オフィスで直子と味見をするべく箱を開けると、きれいな和菓子が品よく並んでいる。
 抹茶と茶碗、茶筅に茶こし、茶杓のワンセットは、たまに二人で飲むためにオフィスにも置いてあった。
 淑子に知れたら、茶道を嗜むものが茶箱くらい用意しなさい、とでも怒られそうだが、まあ、オフィスで飲むくらいならお湯はポットでいいし簡単に用意できた方がいいというのが、直子と佐々木の共通した意見だった。
 ただし、抹茶は濾さないとかたまりがあって、うっかり飲んだ日には苦い思いをしなくてはならないので、茶入れや棗より、茶こしは必須だ。
「うっわー、この栗きんとん、絶品!!」
 直子が一口かじって声を上げた。
「今の時期、これは外せへんな。こっちもいっとく?」
「こっちは食べるのもったいないくらいきれいね~。紅葉をモチーフにしてるけど、何ともいえない味わい深い色よね。名前が唐紅って、もう京都人よねぇ」
 ひとしきり感心してから、唐紅をほおばる。
「練きりの紅葉に包まれたこしあんがほんとに品のある甘味なのよね。しかも佐々木若先生の手ずからのお茶をいただくなんて、番町にいて嵐山を見る、ってとこ?」
 佐々木は点てたお茶を直子に差し出しながら笑ってしまう。
「直ちゃん、食レポはそのへんでええから、どうぞ」
「頂戴いたします」
 直子は神妙な顔になり、茶碗の正面をずらして茶碗を口に運ぶ。


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