好きだから 99

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 ウイルソンがゲイだということは出会った頃に紹介されていたが、仕事のパートナーがゲイだろうがなんであろうが沢村には関係ない事だった。
 ニューヨークの富裕層の生まれで、アッパーイーストサイドのコンドミニアムにパートナーと犬三匹と一緒に住んでいるウイルソンは、既にゲームアプリの会社経営で成功しており、仕事に関してはかなりやり手だった。
 ちなみにウイルソンのプライベートなパートナーは元アメフトの選手で、現在はスポーツジムを経営しているらしい。
 沢村は土地を購入したいと言い出した際、理由を聞かれて恋人の佐々木が隣人で男だと打ち明けた。
 ウイルソンは沢村が今まで付き合ってきたのは女性だったことを知っていたので、ちょっと驚いたものの、すごく真剣なのだと話すと黙って全て引き受けてくれた。
 しかし紹介してくれというウイルソンには、まだ佐々木を会わせてはいないし、ウイルソンに佐々木のことを話したとも言えずにいる。
「また、佐々木さんの逆鱗に触れたりしたくないからな」
 勝手に話したなんて。
 しかも今回のプロジェクトは、ギャラリーの経営だ。
 春に何か案はないかとウイルソンに急かされて、佐々木と一緒に美術館で展覧会を見てきた直後だった沢村が考えなしに口にしたのがそれだった。
 そしていつぞや会社を興してスタジアムを経営した時と同じように、それはいい、とばかりにウイルソンは早速ギャラリー設立を目指してたったか準備をしてきた。
 佐々木の土地の購入の件のこともあるので、一度打ち合わせに来いというウイルソンを邪険にもできず、今回のニューヨーク行きとなったのだ。
 さらに打ち合わせの際、広告宣伝も必要だなというウイルソンに、つい佐々木は実力のあるクリエイターだなどということをぽろっと言ってしまったために、ウイルソンはまたそれはいい、と佐々木へのオファーを真剣に考え始めたのだ。
 佐々木は忙しいからいつになるかわからない、と沢村が婉曲にダメ出しをしてみたが、ウイルソンは急ぐわけじゃないから佐々木の手が空くのを待とう、いずれ日本に行こう、君の佐々木にぜひ会ってみたい、などと言い出した。

 


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