「沢村がガキみたいやったわ」
沢村を知るにつけ、佐々木は地団太を踏む子供のようなところを随所に見つけている。
いわゆるマスコミ向けな沢村は話したくないから仏頂面をしているだけで、それが寡黙な大人みたいに勝手に決めつけられているのだと、最近はわかってきた。
初めは随分大人なのかと佐々木も勘違いさせられたのだ。
「沢村なんか、リトルリーグん時と同じ、ガキのまんまですよ。いや、俺も人には言えないですけどね」
良太がぶっちゃけた。
「まあ、往々にしていくつになっても子供の頃の自分は消えないと思うな。子供の時は、大人は子供とは違うと思っていたけど、大人になってみればなーんだってね」
サングラスをかけた藤堂は一見かなり大人にみえる。
けれど、雪だるまを作ってみたり、サンタになってみたり、やることが突拍子もないといわれるのは子供の心の居場所があるからなのかもしれない。
ガキっぽかっても、別に嫌いになるとかないのに。
時折、佐々木を護らなくては的な沢村が無理をしているような気がするのだ。
まあ、あんまり我儘ぼっちゃんなところは勘弁やけどな。
心の中でつい沢村を擁護している自分に気づくと、佐々木は苦笑せざるを得ない。
散々な言われようや、今頃くしゃみでもしてるんとちゃうか。
今回ホテルは任せろと言われて藤堂に一任している。
どうせなら食事をとるにしろ、飲むにしろ、ゲームのあとで沢村も合流できるようにと、ホテルを知らせておけばいいと藤堂に言われた佐々木は、昨夜、沢村からの電話で、三人が宿泊するホテルの名前を教えたが、ダイニングで食事をしたあとスカイバーあたりにいるから、ゲームの後に来られたらとは付け加えた。
二位の東京ジャイアンツと二ゲーム差で今のところ関西タイガースが首位を走っている。
ゲームが九時までに終われば遅くても十時までには球場を出るから、ホテルまでは三十分でいけるなどと昨夜、沢村は言っていたが、あくまでも沢村に無理はさせたくない。
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