佐々木も頷く。
「それ!」
二人がボソボソとそんなことを話しているところへ、沢村が現れた。
「おっ! サヨナラ、やったな!」
すかさず良太が声をかけた。
「お前、もちょと嬉しそうな顔しろよ、パワスポも取材行ってたはずだぞ」
「そんなヘラヘラできるか。佐々木さん、お疲れ」
不愛想な顔しかマスコミには見せない沢村だが、佐々木を見た途端、笑みを浮かべた。
「お疲れ。えらい早かったけど、飛ばしてきたんちゃうか?」
「普通に、飛ばしてきただけ」
そこへ会計を済ませた藤堂がやってきた。
「お、沢村くん、やったね、今日のMVP」
「ありがとうございます」
藤堂に対してはまた沢村の表情が硬くなる。
「お腹すいたでしょう? 佐々木さんの部屋にルームサービスで食事を用意してもらいましたから、お二人でどうぞ」
「えっ?」
佐々木は藤堂を見た。
「俺と良太ちゃんは、スカイバーへ行くんで、お疲れ様」
藤堂は良太を急かせてちょうど来たエレベーターに乗り込んだ。
取り残された二人はしばし顔を見合わせたが、「腹減ったし、行こう」と沢村は佐々木を促した。
部屋に戻って間もなく、ルームサービスでディナーとシャンパンが届けられた。
スタッフがテーブルにセッティングしている間、佐々木は沢村にベッドルームに行くように言うと、不承不承沢村は移動した。
「サヨナラホームランの沢村がこないなとこにいたら、いくら有能なホテルマンでも気にせえへんわけがないやろ」
佐々木はいくら広いスイートとはいえ、スタッフが部屋にいる間、気が気ではなかった。
そうや、この部屋スイートやんか。
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