真夏の暑さの力をかりずとも、佐々木に会えば沢村は有頂天になってしまう自分をとりあえず猛省はする。
猛省はするが、喉元過ぎればで、佐々木を抱きしめたらもう夢中になっている。
呆れられているのは重々わかっているつもりだが、どうにもしようがない。
出会ってすぐの頃はせいぜい背伸びをして落ち着いた大人の振りをしようとしていたが、徐々にボロが出た。
佐々木に見境なしのガキだと思われて、見限られたらという危惧がないこともないが、何が何でも佐々木を離したくはない。
昨日も佐々木が泊っているホテルに部屋を取ってでも佐々木と一緒にいるつもりだった。
当然泊まるだろうと先回りして用意してくれていた藤堂が、えらく大人に思えてしまう。
せめて仕事だけはきっちりやり通さなければ。
佐々木の仕事の足を引っ張るようなことだけは絶対にしたくない。
最後にシャワーを水に切り替え、頭から被りながら沢村はまだ残る熱を冷ました。
沢村に起こされるまでぐっすり眠っていた佐々木は目を覚まし、バスタオルで頭を擦っている沢村を見上げた。
「………何時?」
「八時になる」
何とか身体を起こした佐々木だが、重だるい身体は自分のものとは思えなかった。
「それ、とってくれ」
佐々木は足元のバスローブに目をやった。
沢村から渡されたバスローブを掴み、佐々木はシャワーに向かった。
大丈夫かと出かかった言葉を、佐々木の不機嫌を逆なでするような気がして、沢村は引っ込めた。
シャワーを浴びて出てきた佐々木は、ふと鏡の中の自分を凝視した。
胸のあたりに赤いうっ血が散らばっている。
それでも辛うじて首は避けたらしいのが、こ憎たらしい。
襟のあるポロシャツなどはあまり好きではない佐々木は、ジャケットの下はTシャツしか持ってこなかった。
これでもし見えるところに痕をつけていようものなら、即刻ポロシャツか何かを沢村に買わせたところだ。
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