沢村にはあまり興味のないことらしい。
家族にはあまり恵まれていないようなことを言っているが、沢村は祖父にはかなり可愛がられたのだろうと想像がつく。
やがてチャイムが鳴った。
「適当にバッグおいて座ってて」
沢村が玄関に向かうと、佐々木はソファにバッグを置いて座った。
座った途端、どっと疲れが押し寄せる。
肉体疲労だけではない、さっきから沢村のことを考えていたら、妙に疲れてしまった。
玄関から、まいど、いつもおおきに、という声が聞こえた。
馴染みの寿司屋らしい。
寿司屋は、前に出前を持ってきた時、沢村が誰といたのか知っているのだろうか。
ふと、そんなことを考えてから、何をあほなこと考えとおるんや、俺は! と、佐々木は自分を叱咤する。
三人前はありそうな器を手に、沢村は戻ってきて、器をソファの前のテーブルに置いた。
「ワイン、日本酒、焼酎、何がいい?」
「せやな、日本酒にしてみよか」
「わかった」
「キッチンどこや? グラスとか」
「俺やるから、佐々木さんは座ってて」
沢村は上着をソファの背に引っ掛け、キッチンへと向かった。
女にもそんな風に優しう言うんやろか。
それともキッチンには女の気配があるんやろか。
一夜の関係やろか。
それともプロとか?
あるいは関西指定の女とか。
またぞろ、くだらないことが頭に浮かんでは消え、佐々木はいい加減自分がうざかった。
けれども、気になり始めるといつの間にか、おかしな疑惑が沸いて出る。
自分には何も文句を言える筋合いはないとは思いつつも、沢村が他の誰かとベッドにいるのを想像するだけで抑えがたい感情が佐々木を支配する。
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