「でも、今度もこないだ能登に行ったメンツで、気の置けない藤堂さんと良太ちゃんだからよかったね」
「ほんまに」
それはそうだなと佐々木も思う。
今は古巣にいた頃と違ってみんなでワイワイというのがないだけに、能登は三人で旅行気分で久々楽しかった。
古巣にいた頃、勝手に敵対視していたプラグインの藤堂とこうして一緒に仕事ができるようになるとは、縁というのは面白いものだと思う。
それに藤堂は知識が半端じゃない。
良太は良太で、着眼点がユニークな上、工藤にいろいろな仕事を任せられてこなすうちに吸収し、考えて、進化しているようだ。
直子は一層頼もしくなったし、何だか自分だけが進歩が足りない気がする。
「佐々木ちゃん、そろそろお昼、お弁当買いに行くけど、何がいい?」
「え、もうそんな時間?」
ちょっと集中するとあっという間に時間が経っている。
「ああ、何か、暑すぎて食欲ない感じやから、サンドイッチとか?」
「佐々木ちゃん、ずっと忙しすぎて、夏バテ気味なんじゃない?」
「うーん、ドリンク剤飲んだりしたんやけどな」
「そう、じゃあ、とにかく買ってくるね」
やっぱ年々年くうてるいうことやなあ。
それに、ちょっと今年は忙しすぎるわ。
古巣のジャストエージェンシーでは、社長の春日の庇護のもと、仕事をコントロールしてもらっていたから、ここまでのことはなかったのだ。
もうちょっと、うまく調整していかんとあかんな。
頼りなげな佐々木のためを思ったのか、夕方になると直子はパソコンの電源を落としてから、「今日の夕食、佐々木ちゃんの分も出前とったから。直子のおごり」と言った。
週に一回、お茶の稽古の日は、オフィスで夕食をとってから、佐々木の母淑子のところへ向かう。
茶道陽成院流の師匠である淑子にお茶を習い始めてからメキメキ上達した直子には、淑子も目をかけているようで、「先生、最近少し厳しくなったんだよね」と直子が言う。
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