「佐々木さんが切れるまで、もって二週間」
沢村がブツブツと口にする。
「なんやそれ」
訝し気に佐々木は聞き返す。
「この二日間のあんたの余韻で、一週間はヌケる。でも後の一週間は徐々に佐々木さんが足りなくなっていって、末期症状が出始めると俺の中で佐々木さん飢餓アラームが鳴り始める」
真面目な顔で沢村が何を言っているのか、一瞬理解しかねたが、すぐそれとわかって、「アホか!」と佐々木はクールでクレバーと評判の人気スラッガーに向かって喚く。
「こっそり携帯に撮ったことはここで謝っておく」
「は?」
またしても理解し難い表情で佐々木は沢村を見上げる。
「や、そんなヤバイやつじゃないし、寝てるとこだし、あとの一週間はそれをオカズにあんたに逢うまで何とか持ちこたえる」
ぶわっと佐々木は熱が顔に集中する。
「そんなん、消せ! アホ!」
「誰が消すか! あんたは俺の生命線なんだし」
しれっと口にして、沢村は足元に置いた佐々木のバッグを持ち上げる。
「言うにことかいて何が生命線や!」
「九時半になるぜ」
このやろ、と思いつつも、佐々木は慌てて部屋のドアを開ける。
エレベーターに乗り込むと、沢村は駐車場のある階のボタンを押した。
次にドアが開いたら今度こそは別れなければ。
今生の別れでもないだろうに、佐々木は無性に切なくなる。
二週間後か。
仕事にかまけていればあっという間だろう。
沢村はちょくちょく電話をかけてくるだろうし。
でも、やっぱもっと一緒にいたい。
思わず本音を心の中で呟いてから、佐々木は大きく息をついた。
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