夏霞8

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「本格的ですね、ってかこれ、マイセンとかじゃないですよね?」
 確か藤堂の部屋でクリスマスパーティをやった時に使った食器の模様のような気がして良太がわざわざ確認する。
「ブルーオニオンやね~」
 佐々木が言った。
「食器は使わないと意味がないからね」
 藤堂はバスケットの中から取り出した紙袋から、トマトレタスベーコンの定番から卵、チキン、ツナなど色とりどりのサンドイッチを取り出して、それぞれの皿に置くと、持参したポットから熱いコーヒーをカップに注ぐ。
 三人ともミルクや砂糖は使わないので、早速豪勢な朝食に取り掛かった。
「馴染みのパン屋さんに頼んでおいて、今朝来る前に取りに行ったんだよ。パン屋さんの朝は早いからね」
「美味しい!」
 良太は遠慮なくサンドイッチを頬張る。
「藤堂さん、ほんま、徹底してはるな」
 佐々木ものんびり富士山を見ながら朝食という、車で遠征ならではの醍醐味を満喫する。
「ちょっと働きすぎな我々には、たまに日常を逸脱したこんな癒しも必要だと思わないか?」
 藤堂がにっこり笑う。
 Tシャツにジーンズの良太、ポロシャツに麻のサマージャケット、チノパンの藤堂はいつものスーツとは打って変わってラフないでたちだ。
 佐々木もジーンズとTシャツの上にパーカーを羽織り、直子の進言の通りチューリップハットを被っている。
 確かにそうなんだけど。
 良太も一応は頷くのだが。
 帰ってから待っている皺寄せの仕事が怖い。
 癒しは欲しいが時間も使いたくないのが本音なのだ。
 大阪なら新幹線でも二時間半。
 良太としては撮影の朝一番で行って、その日の最終で帰れるのが有難い。
 しかし、今回のゆったりめな癒し旅行気分満載の日程は、撮影の前日の早朝車で出て、こうしてゆったり目な朝食などを取りつつ、六時間ほどかけて大阪に到着。
 ホテルに二泊し、撮影の日の翌日にまた車で六時間かけて東京に戻る。

 


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