藤堂の車に同乗しているので、合わせるしかないが、良太はやはり自分の車でくればよかったと思わないでもない。
そんなことを言ったら、工藤のワーカホリックまでマネしてはいけないなどと藤堂に言われそうであるが。
工藤ならたとえ撮影が丸々一日かかるとしても、前日の夜中にタクシーで出て、撮影が終わったらまたタクシーで翌朝戻る、なんてことをやりそうだ。
「良太ちゃん、せっかく富士山もきれいだし、仕事のことはとりあえずおいておこうよ。工藤さんばりに眉が寄ってるよ?」
すかさず藤堂のチェックが入り、良太はうっとサンドイッチが詰まりそうになる。
「工藤さんと一緒にしないでください」
「まあでも、こないだの怪我もあったことやし、ええんやない? たまには」
佐々木も笑う。
「はい」
佐々木に言われると良太も反論しづらい。
藤堂もそんなことを考えてくれたのかもしれない。
それにしても、ついこないだまでは工藤は「大いなる旅人」のロケで京都にいたのに、一昨日からCMの仕事でアスカと北海道にいる。
なーんか、すれ違ってるよな。
良太の脳裏に工藤のしかめっ面が思い浮かぶ。
三人はゆったりした朝食を済ませると、藤堂の車に戻り、本線へ出た。
「そういえば、良太ちゃんが入院した夜、青山プロは大宴会で盛り上がったって?」
藤堂が言った。
「あれやね、良太ちゃんの無事をサカナに飲みたいだけいうやつやったな」
「仕事でなければ馳せ参じたんだが」
今度は助手席に変わった佐々木が笑うと、藤堂が残念そうに言った。
「宇都宮さん筆頭におもろいメンバーやったで。そうや、沢村が、亜弓さんとガチバトルしよって」
「ったく、亜弓のヤツ、俺と沢村の顔見ると喧々囂々で、ガキの頃の話ですけどね」
後部座席から良太が口を挟む。
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