クリスマスの空4

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 たまにその辺のガキ大将と喧嘩をして膝や腕に傷をこさえた力を、祖母が連れて行ってくれたのは宗田医院で、ちょうど院長と囲碁の相手に佑人の祖父がきていたりすると祖母が加わって世間話になり、力は彼らの話から佑人のことや郁磨が空手の全国大会で優勝したなどの情報も聞き知ることになった。
 そういったことは佑人にはまだ話してはいないが、小学校で初めて佑人に会って以来、忘れられない存在になったことは事実だし、中学はちがったものの、老人たちの話から佑人のことを聞き出して知っていた。
 だから同じ高校に佑人が進学したことも意外ではなかった。
 自分の殻に閉じこもり、周りにバリヤを張り巡らせてしまっていることも何となくわかって気になっていたが、二年で同じクラスにならなければ近づくことはなかったかもしれない。
 何といっても、啓太のお蔭ってやつ?
 周りはどう思っていたか知らないが、あの妙なグループは啓太が引き合わせたものだ。
 無邪気で人を疑うってことがない啓太なんかも、かなり大物だよな。
 力は、フウ、と何やららしくもない溜息をついた。
 
 

 ひと吹き北風が通り抜けた空は澄んだ藍色をして、月がきれいに輝いている。
 十二月にしては暖かな日が続いていたが、夜はさすがに冷え込んできた。
 今日は久しぶりに母親の美月が手料理を作ってくれているはずで、家路を急ぎながら佑人はまた言い争いになってしまった力のことが気になっていた。
 ほんとはもっと、力の役に立ちたいと思うのに、うまくそれが言えない。
 いや、今でも佑人は、力とつき合っているというのがほんとのことなんだろうかと思うことがある。
 実際、まさかほんとにつき合うことになるとは思ってもいなかった。
 力を好きだということと、リアルにつき合うということとは、まったく別の次元のことだったからだ。
 佑人にしてみれば、遠くから見ていたスーパーマンがいきなりクラーク・ケントになって傍にきたような感覚なのだ。
 けれど、いざつき合うようになると、遠くから見ているだけでよかったはずなのに、もっとずっと近くにいたいと思ってしまう。
 力に近づいてくる誰もが以前よりずっと妬ましく思えてしまう。
 まさか、力とつき合っていることを口にするわけにもいかないわけで、女の子の影がなくなった力が、早速下級生の女子何人かに告られていたのも知っているし、中には電車の中で佑人と一緒にいる時に近づいてきた他校の可愛い子もいたりする。
 その度に、「受験生だから」とか何とか、力はすげなく断るのだが、佑人はほんとに俺でいいのかな、とつい考えてしまうのだ。
「力に無理強いされたりしてないか? あいつ、ヤリたいばっかの男だからな、無茶なマネされるようだったら、俺が言ってやるからな」
 坂本にはそんなことを囁かれたこともある。

 


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