ACT 13
十二月も中盤に差し掛かると、世の中も忙しなく歩みを速め、賑わしさに拍車がかかる。
青山プロダクションのオフィスでも、例年のイベントである業者を招いての忘年会の準備が始まっていた。
何せ社員の少ないこの事務所では社の一大イベントにもかかわらず、準備から実行までもう入社したその年から既に広瀬良太の手にゆだねられていた。
良太が入社する以前はといえば、今は軽井沢の別荘の管理人である平造と鈴木さん、それに志村義人のマネージャー小杉やアスカのマネージャー秋山らが駆り出されていたようだ。
「お客様に差し上げるプレゼントを用意するのは、いつも楽しいのよねぇ」
鈴木さんは招待客全員に渡す景品からビンゴゲームの賞品などをラッピングしながら呟いた。
一番厄介なのは、宴会嫌いの社長工藤をどうやって少しでも長居させられるかだろう。
自分の会社のイベントで、しかも取引業者への労いを込めた大事な会だとは重々承知の上で、工藤は何だかだと理由をつけて早々に逃げてしまう。
例によって十二月の工藤のスケジュールはとっくに埋まっているものの、忘年会当日は十分時間が取れるはずなのだ。
忘年会といえば、良太にもいくつかの誘いがあって、仕事上どうしてもなのは顔を出さざるを得ないが、久しぶりなかおりや肇からの誘いにはすぐにOKの返事をした。
ただし、沢村も来られないかなというかおりの問いには少し躊躇したものの連絡してみるとだけ言った。
いやむしろ、無理やりにでも誘った方がいいのかもしれない。
俺を避けているとかも、絶対おかしい。
やっぱり、佐々木さんと何かあったんだ。
二人のことはそもそも外野が口を出すことではないから、放っておこうとは思ったものの、とっくに思いっきり首突っ込んでるしな。
ここはひとつ、忘年会に誘って口を割らせてやるっきゃないか。
「ああ、疲れたぁ! 他の人のスケジュールがいっぱいで、昨夜っからちょっと休憩撮っただけで、今までよ」
オフィスのドアが開いて、アスカと秋山が入ってきた。
「例のドラマの撮り直し、まだ何シーンかあるんですか?」
良太は秋山に声をかけた。
「来週にならないと、みんなのスケジュールが合わなくて、まとめて一気にいくらしい。それで何とか終わり」
「でもさ、流の方が自然でやりやすいからよかった。水波って、テンション上がり過ぎッて感じだったし。ま、二度目だから台詞も出てくるしね」
ソファに深く腰を下ろして、アスカはかなり疲れた様子だ。
「温かいミルクティ、どうぞ」
鈴木さんがミルクティとワッフルをトレーに乗せて、キッチンから出てきた。
「すみません」
秋山といえども疲れているようだ。
往々にして演じている本人より、気を使って傍で見ている方が疲れるかもしれない、と良太は思う。
今現在、志村と小杉、アスカと秋山、奈々と谷川、小笠原と真中、と四組のチームで仕事を進めている。
秋山は、工藤にお前に任せると言われたように、オファーがあれば、アスカのスケジュールとの兼ね合いで自分の判断で仕事を入れているのだが、今回の水波との共演は、旧知の制作会社で是非アスカにと請われてのことだったとはいえ、もう少し調べる時間があればと悔やまれるところだった。
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