手には大きな風呂敷包みを抱えている。
五部刈り特大の転校生の、連日の昼休み志央詣では、幸也の予想通り、あっという間に校内でいろんな憶測を呼んだ。
今までも志央に言い寄るという暴挙に出た者がいないではないが、あの美貌で冷たい蔑みの眼差しを向けられるのが関の山だった。
何でこんなタコ坊主が志央に馴れ馴れしくしているのかと、忌々しく思っている者は数知れない。
にもかかわらず、この転校生の迫力なデカさに、誰も何も言えないでいる。
「今日はきんぴらゴボウに、青梗菜の肉だんごに、志央さんの好きな出し巻き玉子ですよ」
能天気な調子で、まるでどこぞの新婚さん気分だ。
三年生棟中に聞こえそうなその声は、当然隣のクラスにいる幸也にも聞こえてくる。
「何が、志央さーん、だ」
二人が連れ立って歩く後姿にむかって、幸也は忌々しげに呟く。
人に執着しないはずの志央だが、どうも藤原という転校生はいけない、そんな漠然とした賭けとは別の苛立ちを、幸也は覚えていた。
幸也の焦燥を知ることもなく、志央は天気がいいからと、七海と七海の作ってきた弁当と一緒に今日もまた屋上に向かう。
牛乳とサンドイッチの志央の昼飯を見て、志央の分も自分が作ってきます、と七海が言ったのは、最初に校内を案内して、一緒に昼を食べた時のことだ。
肉、魚、野菜にご飯に梅干。
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