笑顔をください 26

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 三月末に一年生の奥田がイジメグループに暴行され、金を巻き上げられようとしていたところへ乗り込み、五人の生徒を捕まえたのは実は志央と幸也、それに今ここにいる二人だった。
 イジメが横行している、しかも組織的で、かなり由々しき事態になっていると知ったのは一年程前になる。
 ある生徒が転校していった後に、その原因はイジメで、他にもイジメを受けている者もいるらしい、しかも剣道部員の中にイジメのグループがある、という噂が流れた。
 当時、剣道部副主将大山は怒り、単独でイジメグループを追っていた新聞部員の西本に協力を依頼し、秘密裏に調べ始めた。
 二人とも志央や幸也と同じく学園に既に十年以上はどっぷり浸かったエスカレーター組で気の知れた悪友といったところだ。
 これまでに後ろで誰かがイジメグループを操っているらしいことはわかったが、なかなかその黒幕は尻尾を出さない。
「うちの剣道部でリンチした事実はきっぱりない」
「剣道部員が黒幕ってのは、デマか? 篤郎」
 幸也がからかうように、無愛想な表情を隠そうともしない大山に訊ねる。
「おそらく本物の黒幕が流したんだろう。クッソ…」
 志央は舌打ちした。
「剣道部の活躍を嫉むやつらというセンもないことはないが」
 剣道部はインターハイの常連で、学園がバックアップする一番手になる。
「フン、そうだ。主将以下みんな、今度の大会にかけてる。つまらんイジメなんかで自分から出場停止にするようなバカが、うちの部にいるもんか」
「なるほど」


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