二年の春、生徒会長に立候補した志央に、行動力や判断力、何より人望の厚さから生徒たちはすんなりその権限を与えた。
髪型などにもさほどうるさくないし、校風は昔からかなり自由だ。
ただし携帯に関しては、ほとんどの生徒が持っているし、マナーモードに限って授業中以外の使用を学校側に認めさせたのも志央の生徒会である。
当然カンニングなどに使ったら携帯は即没収、その生徒のクラスも一定期間使用禁止という連帯責任は持たせている。
もっとも、本音を言えば自分たちが使いたかったのというが一番の理由だ。
「えー初めに、今年は創立一〇〇周年にあたり、創立記念祭が行われ、国内外からのお客様をお招きすることになっています。陵雲学園の生徒としてより一層気を引き締めて…」
風紀委員長からの注意が始まると、張り詰めていた空気が一気に解ける。
この陵雲学園は元来中学高校を一貫教育とする男子校だったところへ、近年の少子化の影響を考え、大規模な改築の上、中学高校にも女子生徒を受け入れることにして三年が経つ。
だがもともと体育会系の強い陵雲のカラーもあってか、女生徒数は全校の三分の一に満たない。
体育館に全校生徒が集合すると、黒々としたガクランに女子生徒のセーラーが埋もれてしまう。
「それと、夏休みに取り壊しが決まっている…えっと、静かにしてください…」
風紀委員長の困りきったようすにも、体育館内のあちこちにざわめきが飛び火する。
「黙って聞け。お前ら、小学生か?」
一瞬にして館内は静まり返る。