Tea Time 1

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   ACT 1

 バチンッ…と思い切り背中を叩かれて、「ってぇだろ…! タケ、てめ…」と長谷川幸也は隣のスツールに滑り込むように座る検見崎武人を睨みつけた。
「なあんか、後姿がうらぶれてっからさ」
 街路樹も日ごとに色濃くなりつつある金曜の夜、薄暗い店の中は結構賑わっている。
 秋とはいえよく晴れた日の夜は空気の温度が上がったまま停滞し、汗で体に張りついたようなシャツの感触がうざったい。
 天井でゆっくり回るシーリングファンは熱気をかき混ぜるばかりだ。
「秀さん、俺、ハーフロックね、シングルモルト。あ、こいつのおごりだから」
「誰のおごりだって?」
「お前だろ? 忙しい合間をぬって、わざわざ呼び出しに応じてやったんだ」
 親しげな調子で中央に立つバーテンダーに注文すると、武人は長い脚を組みながらえらそうに応酬する。
「お前、八時には楽勝とか言わなかったか? あそこの柱時計、針がさしている数字言ってみろ」
 お陰で灰皿の吸殻は積みあがるし、もういやというほどこのカウンターの中の棚に並ぶボトルをにらみつける羽目になった、と幸也は武人に顔も向けずに文句を言う。
「たかだか三時間遅れなんて、ちょおっと飲んでりゃすぐじゃん。撮影が長引いちまったんだよ」
「だったら、連絡くらい入れろよ」
「秀さん、何とか言ってやってよ。こいつ、都合が悪くなると、自分のふがいなさを俺にあたるんだぜぇ」

 


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