Tea Time 12

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 長男は旧家の出である母親から遺産だけでなく、その実家が経営していた貿易会社を引き継ぎ、傾きかけたところを盛り返して、今や財界では押しも押されもせぬ商社社長である。
 次男は大手出版社社長の娘と結婚し、今はその社長を務めている。
 長男が幸也の父であり、次男は武人の父だ。
 ここでどうやら政治の世界に手腕を見出されたのが、元外相には孫にあたる幸也の兄である。
 祖父の秘書を務め、近年若手衆議院議員として活躍している。
 父が経営する商社でバリバリ才覚を表したのは政界にも財界にも全く興味のない作家の夫を持つ幸也の姉で、若くして取締役に名を連ねている。
 ともあれ、学者の道を歩み始めた末っ子の幸也にせよ、長谷川三兄姉弟は経済的にも何不自由なく大らかに育ったわけで、どちらかというと金銭感覚が庶民とは大いにずれまくっていることは幸也も自覚している。
 だがそれがいったい何だというのだ。
 経済的にどれだけ恵まれていようが、大切な人の心がそばになければ何の意味もない。
 自分のやりたいように生きてきたが、欲しいと思っても、どれだけ金を積んでも手に入らないものはあるのだ。
 それはここ数年で実感した。
 最近ほとんど一人で過ごしたことはなかった。仲間や家族や誰かしら傍にいた。
 一人の時間が増えたのは留学から戻ってからだ。
 何となく仲間を呼ぼうとも思えないでいた。
 現在一緒に暮らしているのは、留学中に引き取った捨て猫のエメと、東京に戻ってエメの検診に連れて行った先の動物病院で保護されていた仔猫のクルンだ。
 勝浩を部屋に連れてきたのはつい数日前、一緒にスピルバーグの映画を見た帰りのことだ。
「キャットフード? ほんとに? ぜひください、それ!」
「んじゃ、俺んち、寄ってこうぜ」

 


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