Tea Time 2

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 言葉に詰まった幸也の手の中でグラスの氷がカランと音をたてる。
 武人の言い分が満更あたってないでもないだけに、幸也は余計苛つくのだ。
 今現在、相模原にあるJAXA関連のキャンパスにある超小型人工衛星のプロジェクトに参加している研究室で、幸也はコマンド処理システムのチームにいる。
 同じプロジェクトに参加しているアメリカのH大学にいた一年の間にその偉才ぶりを発揮し、担当教授に引っ張られてその研究室で立ち上げたばかりの国際宇宙ステーションに関わるプロジェクトにも首を突っ込んでいる。
 そのためハワイ、フロリダ、東京を軽く飛びまわっている幸也は研究室でも一目置かれる存在となっていた。
 とりあえずそれはそれ。仕事に夢中になっているときは別として、幸也の中には次元の違う大きな問題が鎮座していた。
 十月に入って数日研究室にこもっていた幸也だが、今夜区切りをつけて巷に舞い戻ってきたのである。
 秀さん、と武人に呼ばれたバーテンダーは、二人の会話を聞いているともいないともわからぬ表情のまま、いつものようにシャープな手つきで武人の前にグラスを置いた。
 この二人、秀さんとはもうかれこれ六年来のつきあいになるが、秀さんが口にする言葉は必要最低限。話しかけても常に曖昧な微笑をかすかに浮かべる程度だ。
 青山にレストランバー『HIRONDELLE』がオープンしたのが六年ほど前のことで、幸也と武人は開店当初からの常連になる。六年前といえば二人ともまだれっきとした高校生だったはずだが、主に幸也が遊び仲間の志央とここを拠点に悪さをしていたというわけだ。
 立ち居振る舞いにせよ服装にせよ大人びていた幸也だが、いくら高校生離れしていたとはいえ、秀さんが果たして彼らを大人と思っていたか否かは怪しいと幸也は思っている。
 ただ、雰囲気のワイルドさで高校生とは思われないのをいいことに、平気で酒も飲んでいた武人とは違って、車だからとか何とか理由をつけて連れていた女の子にはいくらでも飲ませながら、幸也と志央は高校を卒業するまでこの店で酒を口にしたことはない。
 そこは抜け目のないワルと武人をして言わせる所以だ。

 


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