コソコソではあるが、棘のある台詞の応酬に聞いていた武人は呆れた。
志央はどこ吹く風といった顔で、取り合わない。
「いい加減にせんか、お前ら。せっかく陵雲学園生徒会OBが顔を合わせたんだろうが」
リビングの柱時計が四時を告げる頃、後片付けを済ませた撮影スタッフ、それに料理教室のスタッフが帰るのを見送って、戻ってきた奈央が四人の若者に声をかけた。
「みんな、こばらがすいたでしょ? ちょっと早いけどディナーを用意してるの。ユキちゃんもどうぞ」
「久しぶりだな~小母様の手料理」
リビングの大テーブルに、奈央がカップやカトラリーを用意していくのを、「手伝います」と七海が立つ。
「ナナちゃん、えらいね~」
武人がからかう。
「下っ端は当然だ」
幸也がまたつっかかる。
「前菜はトマトとピーマンと生ハムのパスタよ」
「かあさん、俺、ゴルゴンゾーラのパスタがいい~」
「自分で作りなさい」
「ちぇ」
駄々をこねる志央を一喝して、奈央は七海に手伝わせてパスタを皿に取り分けた。
「小母様、まだ誰かいらっしゃる?」
七海が幸也の隣に二人分の皿を置いたのに幸也は気づいた。
「そうよ、懐かしい方がいらっしゃるの」
奈央がいたずらっぽく笑った時、チャイムが鳴った。
「あら、いらしたようね、ナナちゃん、ここお願い」
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