Tea Time 52

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 夜七時になる前に、ユウと勝浩はいつものようにゆっくりと散歩から戻ってきた。
 Tシャツにパーカーを羽織っているだけではちょっと寒い夜である。
 大きな月が夜道を明るく照らし出している。
 あの日、ウイーンに発つ幸也を見送った後で、留学ではなくオペラを聴きに行くだけだと聞かされてほっとしたはずなのに、その数日間ですらが長く思ってしまった。
 早く帰ってきてほしい、今度は本当にちゃんと幸也と向き合いたい言葉を交わしたいと切実に思った勝浩だったが、ウイーンに着くなり早速幸也から電話が来た。
 それからここはどこだ、オペラを待ってるところだ、終わったところだと逐一自分入りの画像と共にラインが来る。
 日本時間の夜には必ず電話が入り、まるですぐ近くにいるような錯覚さえ覚えたほどだ。
 お陰で会えない時間が寂しいかもしれないという杞憂は吹っ飛んでしまった。
「あ、こら、待てってば、ユウ」
 部屋に近づくと俄かに走り出したユウに引っ張られて、垣根続きの軽い木戸を押したときだ、青い影が石畳に落ちている。
 勝浩ははっとしてユウのリードを手繰り寄せようとするが、ユウは吠えようともしない。
「よう」
「え………」
 何か言う間もあらばこそ、勝浩はいきなり抱きしめられる。
「幸也…さん?」
「ちゃんと帰ってきたぜ」
「お帰り……なさ……」
 ユウのリードを握り締めたまま、またしても勝浩の言葉は幸也の唇に吸い取られる。

 


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