Moon Light12

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「一体どういうつもりなんだ? 鴻池さんは」
 昔からテレビ関連仲間の行きつけとなっているバーのカウンターで、工藤は声を荒げた。
「んなもん、本人に聞いたらいいだろう?」
 隣でカラリとグラスの氷を鳴らしたのは、これもMBC時代からの腐れ縁、今も局のディレクターである下柳だ。
 互いに売上には関係ないようなドキュメンタリーを敢えて好むというのが長いつき合いの所以でもある。
「俺の電話、無視してるんだ。クソ…何考えてやがる」
 イタリアのCM撮影の時から、鴻池は良太をドラマに出したいなどとは口にしていたが、いくらなんでも冗談だと思っていた。
「まあ、良太ちゃんは可愛いからな~、使ってみたくなったんじゃねーの? それはわかるな」
「んなもん、わかるな!」
 ストレートでウイスキーを呷り、工藤はつっかかる。
 期限が悪い時には好きなラム酒はやらないのが工藤の主義だ。
「大体、プロデューサーはこの俺だ、あの人じゃない! それを、良太のやつ、俺に一言の断りもなく、鴻池さんに言われたから、とか何とかいいやがって!」
「ははー、鴻池さんを妬いてんのね、工藤ちゃんてば」
 下柳は笑う。
「ふざけんなよ!」
 実際その可能性がないとは言い切れないのだ。
「あの人、どっちもいけるじゃねーか。男でもきれいなの好きだったろ?」
「良太はそんなんじゃねーよ!」
 そう、何か違うのだ。
 良太をそういう対象として見ているとは思えない。
 全く、良太のやろう!
 つい、怒鳴りつけてしまった。
 今更ながらに後悔が押し寄せる。
 下柳の言うとおりだ。
 鴻池に嫉妬したんだ。
 ったく!
 それだけではない。
 もうCM撮影の時からあった危惧。
 CMで人気でもでようものなら良太が自分から離れていくのでは、という。
 クソ愚かしい心情。
 羽ばたかせてやれ、鴻池は言ったが。
 俺だけのものでいろ、俺以外に心を許すな!
 限りない独占欲。
 日増しに強くなる。
 そんなものがあいまって、つい、本音が出てしまった。
 工藤は自分を嘲りながら、一人首を横に振った。
 
 
   
 
 撮影は生半可なものでは許されない。
 それはよくわかっていたはずだった。
 ディレクターから何度もダメだしをされ、他の共演者からブーイングを受けながらも、良太は何度も挑戦した。
 アスカにもあんなに何度も練習につきあってもらったのに。
 大澤流などには、目一杯文句を言われた。
「お前、主役の俺たちに何度もリテイクさせるなんて、いい度胸してるじゃねーかよ! こっちはこんなとこでうだうだとつまづいてる暇ねーんだよ」
 サブディレクターはそれでも、そんな良太の一生懸命さを買ってくれて、「言いたいやつには言わせておけ。いいものができるんなら、何度でもやるさ」などと良太を慰めてくれる。

 


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