いずれにせよ手段は何でも、沢村にとってはどこでもよかったのだ、父親の息のかかった『間者』を欺いてとにかく佐々木に会えるのなら。
一応、良太やアスカや藤堂や自分に協力してくれたみんなの手前、沢村も性急な行動は極力抑えていた。
だから少しでも佐々木に触れてしまえば、抱きしめて口づけずにはいられない。
唇を重ねればもう際限なく欲しがってしまう。
執拗に、息を止めかねないほどに佐々木の口腔を舐り、佐々木の身体から力を奪っていく。
こめかみや髪、頬から項へとに唇を這わせながら沢村は直子がスタイリングした佐々木の、それがいかに佐々木によく似あっていようと沢村の前にはただ邪魔くさいだけだったジャケットやパンツを脱がせ、最後にタンクトップもウザった気に捲し上げると縺れ合ったままベッドに倒れ込んだ。
賑やかだったざわめきも消え、寂とした空気の中に、着ぬずれの音に混じって二つの吐息が甘やかな音を紡ぐ。
逸っているのは自分だけでなく佐々木も自分を欲しいと思っていることを沢村は疑ってはいない。
上気した頬だけでなく佐々木自身熱を帯びているのがわかると、埋み火のように沢村の中で燻っていた情動が大きな火の塊になって体中を駆け巡る。
ただでさえ抱きしめることすら我慢していたのだ、沢村は佐々木の身体を俯せてその白い腰を上げると、箍が外れそうになるのを辛うじて宥めながら着替えに戻った時自分の部屋から持ってきたローションを己に塗りたくり、とっくに収まりがつかなくなっているものを押し入れた。
ああ、と二人ほぼ同時に呻きが漏れる。
狂いそうに佐々木を焦がれて欲しくて、沢村は想いのたけを佐々木に打ちつけた。
時折佐々木は過度なほどの愉悦に小さな悲鳴のような声を上げた。
大丈夫、あんたを壊したりしないから、こんなに綺麗な人を………。
そうだ、ちょうど一年前のあの夜も、ひどく綺麗で蠱惑的で、そしてこれほどまでに貴やかな色香を持つ人を沢村は知らなかった。
お世辞にも今まで付き合ったことのある相手に対して労わりの気持ちなど持ったことがなかった。
むしろ後腐れなく夜の相手だけさせた女も数知れず。
そんな沢村が愛する人を大切にしたいと心から思った時、初めてほんのいくばくかは、かつての女たちに対してあまりに雑な扱いだったことへの申し訳なさを思いやったが、そんなことはもう忘却の彼方だ。
ベッドからバスルームへと場所を変えてもただ幾度も、愛し合った。
互いに、ふとした弾みに見え隠れする何か得体の知れない影のようなものを感じ取ってか、佐々木は沢村の背にしがみつくように腕を回し、沢村は佐々木の何もかもを支配してしまいたいというように深く深く佐々木の内へと己を沈ませた。
絶対、あんたを守るから………。
