豪は言葉もなく、元気の腕を掴むと中に引っ張り込んだ。
「おい……」
エレベーターのドアが閉まるのと、何ごとがあったかと気にした一平がバーのドアを開けたのと同時だった。
「離せよっ!」
元気の抗議に耳もかさず、むっつり宙を睨みつけたまま、豪は元気を外に連れ出すと、路肩に停めてあったチェロキーに元気を押し込んだ。
「お前、どういうつもりだ? 友達が一緒だったんだぞ」
運転席に座るとすぐエンジンをかける豪は、何も答えようとしない。
恵比寿にある豪の新しいマンションには、元気はまだ足を踏み入れたことがなかった。
駐車場が隣にあり、仕事の便がいいということで決めたという部屋は、T市にある農家とはうってかわって都会的な匂いがした。
豪は車から元気の腕を掴んで降ろすと、カードキーでドアを開けた。
相変わらず言葉もなく、元気がトン、と突き飛ばされたのはフローリングの真ん中辺りに敷いてあるふかふかのラグマットの上だった。
「ちょ、おい、待て…!」
元気は完全にキレている豪の目を見て、やばい、と思う。
待てと言って待つほどの余裕があれば、エアコンのスイッチくらい入れていただろうし、考えていたようにちゃんと椅子に座らせて話を聞いてもらっていただろう。
だが、おそらくみっちゃんに聞いてやってきてあんな場面にでくわしたら、頭が沸騰したというわけか。
襲い掛かるが早いか、豪は元気の服を力任せに引き剥がす。
「豪、おい、待て、よせ……」
元気の首の辺りから胸から身体中に噛みつくばかりな荒い愛撫を繰り返したかと思えば、元気のからだをひっくり返して、豪は性急に己れを突き入れようとする。
「あうぅ…………っ! 痛い、痛いって、………豪」
辛うじてオイルを垂らしただけで余裕もなく侵入されようとするところは軋み、元気は汗か冷や汗かわからない状態で、少しでも痛みをやわらげようと努力する。
たがが外れた猛獣は荒れ狂う。
それでも一ヵ月ほど離れていた若い身体は、互いに飢えていたことを思い知る。
滴り落ちる汗をかまうこともなく、しばらく愉悦を貪りあった二人は、さすがにいつにない疲労感を覚え、身体を離して仰向けになった。
「どんだけ電話しても出ねぇし、あんなやつとべたべたしやがって……」
吐き出すように豪が口にする。
「言っとくが、………やつはどっかのプロダクションのイカレたヤロウだ。俺にはあんなのを相手にする趣味はない…」
まだ息も整わないまま、元気はそれだけは全否定したかった。
「わかってる。一平もあそこにいただろ? やっぱり、また一平んとこに戻る気だったんだろ! 俺は許さねぇからな!」
がばっと身体を起こして、また豪は元気を見下ろした。
「勝手なこと抜かすな!」
元気も負けずに言い返す。
「ぐちゃぐちゃ言い訳しながら、あの女とよろしくやってたのはお前だろーが」
すると今にも泣きそうだった豪の表情が変わり、豪はクスリと笑う。
「……何がおかしいんだ」
「たまには元気も妬いたりするんだ」
今度は元気の頭が沸騰する番だった。
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