鬼の夏休み13

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「速水さん、お久しぶりです」
 この男は犯罪心理学者で、京助と同じT大で准教授をしている。
 実のところ良太はこの二人はあまり得意ではなかった。
 派手で遊び好きで、何より、千雪もあまり好きではないらしいことが、良太にもわかっている。
「名探偵もこんなところにいたのか? 超古い別荘にせっかくセレブが集ってる、探偵小説のネタには持ってこいだよな?」
「それやね、ジャージと黒縁メガネで登場せなあかんかったて、今良太と話とったとこですわ。ああ、そや、最初の犠牲者は、えせ心理学者のセンセ、言うんがおもろいかもな」
 速水と千雪にとっては、嫌味の応酬が日課のようになっているようだ。
「ほう、そりゃいい。次はお前、バツイチの派手な華道家ってやつだぞ?」
 速水が理香に言った。
「あら、あたし? ついに小説デビュー?」
 むしろ理香は喜んでいる。
「え、理香さんて華道家なんですか?」
 そこに良太が口を挟んだ。
「あら、そうなのよ。これでもお花生けたりするの。見えない?」
「はあ、全然。人生楽しく遊び過ごしてる人だなとか」
 直球な発言に理香は笑い出した。
「やだ、この子、大好き! 超ダイレクト!」
「なるほど、さすが千雪ちゃんの類友だ」
 速水も笑いながらそんな科白を吐く。
「類友はお二人ちゃいます?」
 千雪がさらに言葉を返した。
「類友って、俺、千雪さんみたく、傍若無人なことしませんよ」
「俺が傍若無人みたいな言い方やんか」
「いやそう言ってるんすけど」
「俺の何が傍若無人や? 裏切りよって!」
 そんな二人のやりとりが速水も理香も面白いらしい。
「やだ、仲間割れ? そういえば、スキーに来てた麗しの茶道の若先生は?」
 理香が思い出したように聞いた。
「仕事です。茶道の若先生はサブで、本業はクリエイターですから」
 きっぱりと良太は答えた。
「ああら、残念。またお会いしたかったのに」
 理香が大仰に肩を竦める。
「なかなか軽井沢くるような暇ないんです」
「良太ちゃんは暇なの?」
 ちょっとムッとした顔で良太は理香を見た。
「違いますよ、社長のお供で仕事です」
 とはいうものの、良太にしてみればそんなに仕事という感じもない。
 速水と理香は今度は調理係の京助のところへ行って、からかおうという魂胆らしい。
 工藤を振り返ると、まだ何やら紫紀と話し込んでいる。
 まあでも、工藤には多少は骨休めになればいいんだけど。
 ここずっとちゃんとした休みとかなしで動いてるよな。
「ああ、そっか、工藤さんのバースデイサプライズとか?」
「え………」
 良太は思わず千雪を見つめた。
 やっぱ知ってるんだ、工藤の誕生日とか。
 確かに来週工藤の誕生日だが、おそらく京都だ。
「あ、いや、工藤さん、そういうの別に、あんまし喜ばないと思うし」
 俺からプレゼントとかって、何か……な。
「良太の誕生日には工藤さんから何かもろてるんやろ?」
「はあ、まあ、社員ですし、一応。俺は、年二回、お中元とお歳暮はあげてるし」
 もぞもぞと良太は口にした。
「お中元とお歳暮? 何やそれ」
「だから、工藤さんの行きつけの店に、お中元とお歳暮のボトルを入れてもらってて」
 酒くらいしか良太には思いつかないし、昔隣に住んでいたというニューヨークの榎木佳乃からは毎年工藤の誕生日に何かしらのプレゼントが届くが、ネクタイだったりカフスだったり、そういうちゃんとした工藤が身に着けられるものとか、良太には選ぶのも難しい。
「フーン、お中元がバースデイプレゼントで、お歳暮がクリスマスプレゼント、いうわけか」
 千雪にしっかり言い当てられて、良太はちょっと赤くなる。
「だから、お中元とお歳暮ですってば」
「良太、工藤さんに対してだけは、直球やのうて、変化球やねんな、しかもかなりなトルネード」
「変な比喩やめてください。それより、いくら京助さんでも、ずっとBBQ焼いてるって、ちょ、可哀そうな気が………」
 良太のところからは、京助と涼、それに大までがずっとBBQのコンロの前でひたすら食材を焼いているのが見える。
「ああ、あれな。実はああでもせんと、あちこちから女やそれに男までが言い寄ってくるから、それに対する防衛線らしいで」
「はあ?」
 良太は思わず三人を順番に見やった。

 


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