Winter Time33

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 宴会やパーティなどが嫌いな工藤だが、工藤に目をかけてくれているフジタ自動車会長の誘いだったので断り切れなかった忘年会がやっと終わると、工藤は二次会に繰り出そうという誰の誘いも断って一人、ホテルからタクシーで乃木坂に向かっていた。
 会社に戻って六階の自分のオフィスに立ち寄り、デスクの引き出しから白い封筒を取り出して、上着のポケットにしまう。
 時計を見ると、十一時半。
 まだ良太は帰っていないだろう。
 工藤はコートをはおり、会社を出ていつもの店に足を向けた。
「いらっしゃいませ」
 カウンターにひとつスツールが空いているだけで、狭い店内は満席だ。
 コートも脱がずに、工藤はスツールに座る。
「まだ雨が降っているんですか」
 グラスを用意しながら、前田が聞いた。
「ああ、みぞれ混じりですよ」
「それは寒そうですね」
 クリスマスイブの晩は店を開けると言っていたのを思い出して寄ってみたのだが、馴染みの客に混じって、若いカップルの顔も見える。
「ん? 俺は頼んでませんよ」
 目の前に置かれたグラスに違和感を覚えて、工藤は言った。
 工藤が何も言わない限り、大概前田はラム酒を用意してくれる。
 しかしそのグラスからは濃厚なコニャックの香りがした。
「お歳暮、だそうです」
「え……?」
 前田が見せてくれたボトルには、見慣れたへたくそな字で『お歳暮』と書いてある。
「…………良太が?」
「ええ、六時頃いらっしゃいまして、これを工藤さんにとおっしゃられて」
 あのバカ!
 工藤は苦笑いして、琥珀色の液体を口に含む。
 心なしか味わい深いのは気のせいかも知れないが。
「もう、お帰りですか」
 グラス一杯で立ち上がった工藤に前田がにっこり笑う。
「ああ、また来ます」
 工藤も笑い返し、店を出ると携帯で良太を呼び出した。
 さっきよりみぞれが強くなっていて、工藤のコートに音をたてて降りつける。
「あ、忘年会終わったんですか?」
「終わった。そっちはどうだ?」
「俺は、もうとっくに終わってます。早く来てください」
「ああ? 今どこにいる?」
「高輪です! 今日はこっちだって言ったじゃないですか。寒いんだから早く来てくださいよぉ。あ、すんげ、雪んなってる…」
 工藤が携帯を切ると、運よくタクシーが停まり、客を降ろしているところだった。
「高輪!」
 工藤は運転手に一言告げる。
 まったく良太は何を考えているんだか。
 エントランスの前で降りると、みぞれはすっかり雪に変っていた。
 慌てて自分の部屋に駆けつけてみれば、良太が肩をすぼめて立っている。
「早く来てくんないから、俺、風邪ひいちゃうじゃないですか」
「バカか、何で中に入らないんだ。鍵持ってるだろう」
 工藤は文句を言う良太を睨みつける。
「それが、今夜、違うスーツ着たら忘れちゃって…」
 ったく、と口では言いながらも、工藤は鍵をあけて良太を中に入れる。
 暖房を入れるなり、コートを脱いでいた良太がくしゃみをする。
 誰かといるのがとても暖かい。
 こんなイブは初めてだ。
 工藤は笑う。
「笑わなくてもいいだろ。工藤さんが帰るのが遅いからじゃないか」
 冷たい良太の体を抱きしめ、黙れと言う代わりにに工藤は唇を合わせた。
「ちょ……苦しい…って、くど……」
 再びキスに襲われると、良太の体は温かく溶けていく。
 憎まれ口もまた可愛いものだ。
 その存在も何もかもが、今夜だけは――――。
 

 


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