夢ばかりなる3

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  ACT 1
  

 
 平和なはずだった。
 工藤が腕に包帯という姿でオフィスに戻ってきたのは、数日後の夕方のことである。
「工藤さん、どうしたんですか、それ!」
「何でもない」
 驚いて駆け寄る良太に、工藤はにべもなく言い放った。
「何でもないってことはないだろ!」
 良太は納得がいかない。
 鈴木さんも心配そうな顔で工藤を見つめている。
「ぶつけられたんだ。ミラーをやられたんで車は修理に出した。医者に連れて行かれて、大げさに包帯なんか巻かれただけだ」
 それだけ言うと、工藤は社長室に上がってしまった。
 ふいに、良太の脳裏に、以前、工藤を殺そうとした男の事件がよみがえる。
 あの時も工藤は良太に何も言ってくれず、勝手に相手を調べた良太が工藤の代わりに刺されたのだ。
 思い出すだけでも戦慄が走るが、また工藤に何かあったらと思うと気が気ではない。
 最近、工藤へのホットラインにかかってきた電話を何度か取った。
 相手はいずれも同じ人物で、しかも名乗らない。
 何者で、工藤とはどういう関係なのか、工藤は聞いてもごまかすか、知らなくていい、と言い捨てるだけだ。
 良太は不穏な空気をまたしても感じないではいられなかった。
 
 
 
 
 少年時代から良太とバッテリーを組んできた幼馴染の飯島肇から飲みに行こうという誘いが入ったのは、そんなある日のことだった。
 高校時代は野球部の主将を務め、直球一直線で融通の利かない良太をあやしながら、力の足りないなりに部をまとめてきた面倒見のいい男である。
 良太の家族が住み慣れた町を離れざるを得なくなってから、連絡を取っていなかった良太に水臭すぎると怒る肇と、良太がCMに出たことがきっかけで再会してからは、たまに時間をみつけては飲みにいったりしている。
 さすがに師走ともなれば、お互い忙しいサラリーマン同士だが、何とか時間を作って忘年会という話になった。
 かおりも誘って、という肇に、くさくさしていた良太は、わかった、十二月最初の週末あたりで、と電話を切った。
 何をくさくさしていたかといえば、忙しいのは今に始まったことではないが、ここのところ単独で動くことが多く、良太に何も聞かせないぞ、というような工藤の態度に対してである。
 怪我をして帰ってきた時は驚いたが、ぶつけられた以外は語ろうとしない。
 ああそうかよ、勝手にしやがれ!
 心の中で悪態をついてみるのだが、工藤への心配が消えるわけではない。
 同時に嬉しいこともあった。
 良太がメインでプロデュースした番組が新年早々放映されることになったのだ。
 プロチームの若手スラッガーだけでなく、社会人やクラブチームにも密着取材し、ディレクター下柳の目線がものを言う、質のいい番組に仕上がっている。
 もちろん、スポンサー側の求める華、関西タイガースの人気スラッガー沢村も画面の中でしっかり気を吐いていた。
 
 

 


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